エステサロンは薬機法(旧薬事法)の規制対象となるのか

医療機器は薬機法(旧薬事法)によって規制されています。エステサロンなどでは美顔器や脱毛器など業務用の美容機器を使っていますが、これらの機器は薬機法の対象となるのでしょうか。また医療機器以外で、エステが薬機法の対象になることがあるのかという点についても確認してみました。

特別な資格を必要としないエステティシャンの施術だからこそ、エステサロン選びには十分な検討が必要です。

薬事法とはどういうものか、わかりやすく説明します

「薬事法」の歴史

「薬事法」という名称の法律が初めて制定されたのは、1943年のことです。これまであった「薬品営業並薬品取扱規則」「売薬法」「薬剤師法」が統合されてできました。1960年には「薬剤師法」が再び分離して、「薬事法」として機能してきました。

「薬事法」は2014年に名称が改正され「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」となります。名称が長いので厚生労働省は「医薬品医療機器等法」という略称を使っていますが、一般的には「薬機法」と略されています。

「薬事法」の名称が改正された理由

「旧薬事法」でも「薬機法」と同じように医薬品や医療機器などについて、開発や治験、承認審査や製造などの各段階での規制を行ってきました。2006年の「薬事法」改正までは、医療機器ではなく医療用具の名称です。

呼吸補助器やMRIなどの高度な医療機器が登場し、保守管理や修理などのメンテナンスという医薬品にはない事情が発生したため、2006年の改正では医療機器の賃貸業と保守管理・修理業も「薬事法」の規制の対象となります。

しかし改正後も医療機器の規制については条文が独立しておらず、医薬品と同列に医薬品に準ずるものとして扱われていました。その後、医療機器のバージョンアップの速さから、医薬品と同様の審査や一部変更の承認を受けていては市場化するまでに時間がかかり過ぎるという事態が発生します。

そこで2014年の改正では「医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売業及び製造業等」の章が新たに設けられることになったのです。これにより医療機器の承認の仕組みが変更されました。さらに再生医療の実用化に向け「再生医療等製品」が新設され、安全性に関する規制も強化されています。

これらの改正に基づいて、法律の名称も変更されました。

エステサロンの業務用機器は薬事法の対象になる?

薬機法では医療機器を人や動物の疾病の診断や治療、予防に使用されるものとしています。人や動物の体の構造や、機能に影響を及ぼすことを目的とした機械器具等も医療機器です。具体的にはペースメーカーやMRI装置、聴診器やメスなども該当し政令で定められています。

一方、エステサロンなどで使用される業務用エステ機器には明確な定義がありません。エステで使用される機器には痩身器・美顔器・脱毛器がありますが、家庭用との違いは出力や機器の大きさだけです。大きさや価格などの面で現実的ではありませんが、エステで使う器具を家庭で使用することもできます。

エステサロンと医療現場で共通して使われているのが脱毛器と、痩身やリフトアップに効果があるとされるハイフ(高密度焦点式超音波)です。脱毛器にはエステサロンで使うものは光脱毛器、医療現場で使うものは医療レーザー脱毛器と明確な区別があります。

両者は出力が異なり、効果にも違いが出ます。エステサロンの施術では特殊な光で発毛組織にダメージを与え、ムダ毛の抑制や減毛を行います。医療レーザー脱毛では発毛組織を破壊して、毛が生えないようにすることが可能です。

医療レーザー脱毛器は名前の通り医療機器に分類されるので、医療機関でしか取り扱うことができません。ハイフは、もともと医療機器として開発されました。高密度な超音波エネルギーを照射して、熱と超音波による振動によって脂肪を分解し老廃物を排出する仕組みです。

こちらも脱毛器と同様、医療用とエステでは使用している機器と効果が異なります。医療用では焦点式ハイフを使用しており、エステ用は蓄熱式ハイフです。高密度焦点式超音波リフトは医療行為に当たり、焦点式ハイフは医療機関でしか扱えない医療機器になります。

これらのことから、エステサロンの業務用機器は医療機器ではないので薬機法の規制外です。

エステと美容医療

特別な資格を持たないエステティシャンと、医師免許を持つ医師が同じような仕事をしているのは不思議ですよね。エステサロンはリラクゼーションを求める人が通うサービス業であるのに対し、医師の行為は美容医療と呼ばれ美容クリニックで行われる治療です。

美しさを求めて自ら通う点は共通しており、混同されることも多いですが両者は全く異なる業態です。美容医療では医薬品や医療機器を使って、医師が医療行為を行います。治療法や治療計画の提出が必要で、化学的な根拠に基づく効果が証明された医薬品や医療機器が使われます。

二重まぶたの手術や、ヒアルロン酸注入なども行うことが可能です。エステサロンが医療行為に当たる施術をすると「医師法」違反に問われます。

それでもエステは薬機法で規制される

特別な資格がなくても運営でき多種類の施術があるエステサロンは、「医師法」だけでなく「あ(あんま)は(はり師)き(きゅう師)法」や「美容師法」「理容師法」など多くの法律で規制されています。「薬機法」の規制対象は医療品と医薬部外品、化粧品と医療機器です。

同法の第66条では、誇大広告も禁止しています。この条文の対象となるのは広告代理店や制作会社の他、アフィリエイターやライターなどの個人まで広告に関わる人すべてです。エステティシャンも例外ではありません。66条の1項では医薬品などの名称や製造法などに対して、明示暗示を問わず虚偽や誇大な記事を広告したり、記述したり広めたりすることを禁じています。

2項には医薬品などの効果や効能などに対して、医師やその他の人が保証したと誤解されるおそれがある記事を広告したり、記述したり広めたりすることが挙げられています。エステサロンの美容機器は医療機器ではないので、カウンセリングの際にサロンで使用している美容機器の性能に関して「脂肪を分解する」「肌荒れやニキビを治せる」「永久脱毛ができる」といった説明をすれば薬機法に抵触します。

化粧品などの販売をしている場合も同様です。

エステサロンが薬機法に抵触する場合とは

エステサロンは、「医師法」や「美容師法」など多くの法律の規制を受けています。「薬機法」も例外ではありません。エステサロンで使用している美容機器は医療機器に当たらないので、それ自体が「薬機法」に触れることはありませんが、機器の効果について虚偽や医師などが保証しているかのような表現をすると「薬機法」に違反します。